With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
久保くんとは、中学からずっと一緒だし、白鳥くんとは帰り道が途中まで一緒だから、いろいろな話をしながら帰る。


大宮くん、佐藤くんは、初対面からいろいろあって、否が応でも向き合う機会があった。


でも松本くんとは、クラスは一緒だけど、帰り道は別だし、ゆっくりお話ししたことが、今までなかった。


お弁当を食べ終え、お腹もいっぱいになったところで、私は改めて彼と向き合った。


「松本くん、私の思い過ごしだったら、ごめんね。」


「うん。」


「何か悩みがあるんじゃないかなって思って。」


「・・・。」


「昨日の帰り、佐藤くんが騒いでた時、松本くんが話に全然乗って来ないで、なんか沈んでるような気がしたんだよ。」


昨日もそうだったけど、彼がときたま見せる、暗いというか、なにか思い悩んでる様子が、私はずっと気になっていた。


「そっか・・・心配かけてごめんな。」


まずそう言って、頭を下げた松本くんは


「悩みと言えば悩みなのかな。でも木本さんに話すのは申し訳ないし、大したことじゃないから。」


と笑って見せる。


「申し訳ないなんてことはないよ。私たちクラスメイトだし、部活の仲間じゃない。だから、無理にとは言わないけど、もし私でよければ、話してくれないかな?」


少しでも松本くんが話しやすくなればと、私は彼に笑顔を向ける。少し躊躇ってたけど、その笑顔が効いたのか、松本くんはゆっくりと口を開いた。


「みんなすげぇなと思ってさ。」


「えっ?」


「白鳥は言うまでもないけど、佐藤は肩と長打力、大宮は足、創もファーストの守備は上級生を遥かに超えてる。背が低いのが、ファーストとしてはマイナスだけど、それを補って余りある身体の柔らかさがある。彼はショ-トバウンドの送球を捕らせたら、少なくとも高校野球のレベルでは、トップクラスにうまいと思う。木本さんもそう思うだろ?」


「うん。」


「みんな野球選手としての武器がある。それに引き換え僕には、みんなのように誇れる武器が何もない。」


「松本くん・・・。」


「自分で言うのもなんだけど、僕も足もそこそこ速いし、当たればある程度、ボールを飛ばす力もあるつもりだ。でもそれが人の目を引いて、『お、アイツすげぇじゃん。』って思ってもらえるレベルかと言われれば、悔しいけど、そうじゃない。全部が平均点か、よくて平均点からちょっと上。佐藤のように『先輩なんか目じゃねぇ。』なんて、とても言えるような選手じゃないんだ。」


そう言うと、松本くんは寂しそうな表情を浮かべた。
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