With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
残念ながら、試合はそのまま明協劣勢のまま進んで行く。


小林投手の前に、明協は凡打の山を築き、星さんはその後踏ん張ったけど、2番手の関口さんが追加点を奪われてしまう。


大宮くんも松本くんも結果が出せず、松本くんは途中交代でベンチへ下がった。


「お疲れ、松本くん。」


私は声を掛けたが


「ゴメン。」


一言、そう言うと、松本くんは私の顔も見ずに離れて行く。


そんな一方的になってしまった試合の雰囲気が一変したのが、ついに白鳥くんが登板した7回。


明協側だけでなく、東海ベンチ側で見ていた女子たちからも歓声が上がり、小林雅則がムッとした表情を浮かべているのが見えて、笑ってしまった。


(いよいよだな・・・。)


実戦でベールを脱ぐ白鳥くんに期待と、でもちょっぴり不安を抱きながら見守っていると、小林くんに全く引けを取らない、いやそれ以上のボールをビシビシ投げ込んで来て、相手を完全に封じ込めた。


「ナイスピッチング!」


戻って来た白鳥くんを、私は思わず立ち上がって迎える。


「ありがとう。」


そう答えた白鳥くんも流石に、ホッとしたように笑顔を浮かべた。


でも試合は、小林くんの後に出て来たピッチャーから1点を取るのが精一杯で1ー7の完敗。


「お前のチーム、大したことないな。4番のキャプテンさん以外は、打たれる気しなかったぜ。」


試合終了後、相手のマネージャーさんに挨拶とお礼に行った私を捕まえて、小林雅則はこう言い放った。


悔しかったけど、その通りの結果に終わったので、何も言い返せないでいると


「いい加減にしてよ、小林くん。いくらなんでも失礼だよ。」


試合前と同じように彼をたしなめてくれたのは、東海高マネージャーの牧原由貴子(まきはらゆきこ)。彼女とは小、中が一緒で、私にとっては、おスミと並ぶ親友。そしてもう1つ言うと、小林くんとは今もご近所のいわゆる幼なじみ。


「大丈夫だよ、ユッコ。小林くん、確かに今日は完敗。でも勝敗は時の運とも言うからね。今度はこっちも白鳥くんが最初から投げるから、今日のようにはいかないから、そのつもりで。」


最後にそう言うと、私は足早にその場を後にした。小林雅則の言い草が、あんまり頭に来たから、つい言い返してしまったんだけど、後になって冷静になって考えたら、星先輩に失礼なことを言ってしまったと反省した。
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