With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
松本くんの言葉通り、このあと、私たちは週中に1回。そして学校が午前中で終わる土曜日にもう1度集まって、最後の追い込みをかけることになった。


校門で一回白鳥くんと別れて、私たちは遠回りになるけど、電車とバスを乗り継いで、約1時間後に再集合。お母さんにご挨拶して、もう勝手知ったるという感じで応接室へ。もう前置きもなく、私たちはテキストを広げて、各々の課題に取り組み出す。そして行き詰ると、その都度、私や久保くんに声が掛かるというシステム。3度目になって、この会の流れもだいぶスム-ズになって来た。


「考えてみたら、僕たちにはすごく有意義な時間なんだけど、木本さんや創にとっては、自分の勉強の時間を削られるだけで、迷惑だよね。」


過日、学校で松本くんが申し訳なさそうに言って来たけど


「ううん、そんなことは全然ないよ。教えるってことは、自分にとっても確認になるし、自分の足りないところに改めて気が付くことにもなるんだから。」


私が答えると


「そっか。そう言ってもらえると、僕も気が楽になる。」


松本くんはホッとしたように笑顔になる。それにこんな風に、一緒の時間を過ごしているうちに、お互いの新しい面に気が付くことにもなった。


特に私が印象に残ったのは、意外・・・と言っては失礼だけど、松本くんのリーダ-シップだった。これどうしようか、どうしたらいいっていう場面で、パッと判断を下したり、先頭に立って行動を起こすのが松本くんであることが多かった。三兄弟の末っ子で甘えん坊、あんまり自分に自信がない様子に見えた松本くんだけに正直驚いた。


この日、休憩時間につまむお菓子を、白鳥くんのお宅で出していただいてばかりじゃ申し訳ないから、各自持ち寄ろうと言い出したのも松本くんで、お茶だけは出していただいちゃったけど、6人が自分の好きなお菓子を持ち寄って、賑やかなブレイクタイムになった。


やる時はやって、休む時は休む。そのオンオフの切り替えとやる時の集中力は、さすがにみんなスポ-ツマン、私も見習わなきゃと思わされた。


こうして約5時間、本当に真面目に勉強をして、夕食タイム前の18時過ぎにはお暇する。ここで私たちは初めて白鳥くんのお父さんにお目に掛かった。


40代前半の若さで、何社ものグル-プ企業を束ねるトップで、さぞ近寄り難い方かと思いきや、温厚な表情で、私たちにも気さくに話し掛けて下さった。


お母さんも妹さんも、そんなお父さんにピッタリと寄り添っていたけど、1人白鳥くんだけがポツンと距離を置いている姿が、印象的だった。
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