今夜も抱きしめていいだろ?
「純一、今日はやけに飲むんだな?」

良一兄さんにそう言われて僕はギョッとした。

ヤバい。

バレる。

慌てて言い訳を口にした。

「だって、今日は喉が渇いてるし、この料理がしょっぱいから。」

弁当の味付けが多少濃いめなのは全員わかっていた。

「そう言われればちょっと味が濃いか。」

「そうだよ。良一兄さん、ちゃんと食べてるの?」

「おまえの若さなら弁当だけじゃ足りないだろうよ。」

良かった。

バレてない。

そう思って少し安堵した。

今度は優一兄さんが母さんに言った。

「今日の出しゃばり女はいったいどういう縁?」

母さんはいつもの優しい表情でその質問に答えた。

「武者様は大おばあ様のお知り合いと聞いてます。」

「へぇーそうなんだ。」

その話題はこれきりだった。

僕はもっと詳しく知りたかったが

この場で聞いたら変に思われる。

後日直接母さんに確認しようと決めた。

目下は温子さんにどうやってお茶に誘ったらいいかを悩んだ。

ごく自然にできないだろうか。

誘う言葉に迷った。

なにしろ女性をお茶に誘うなんて初めてのことだからだ。


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