今夜も抱きしめていいだろ?
その夜、

純一は温子に電話した。

いきなりだ。

考えに考えて

回りくどい言葉ではなく

単刀直入に伝えたいと思った。

「はい、どちら様でしょうか?」

彼女だ。

はっきりとした声が耳元に響いた。

「早川です。」

「えっ?」

「早川純一です。兄ではなく。」

「ああ、三男の方ですね。」

「そうです。今お時間よろしいでしょうか?」

「何かしら?」

「昼間は大変申し訳ありませんでした。僕は兄たちとは違うとお伝えしたかったのです。」

「違うって、何が?」

「僕は正直温子さんとお会いしたいのです。ダメでしょうか?」

「会うって、付き合うってことかしら?」

「はい。」

通話越しに気まずい雰囲気が流れた。

「あの、もう一度お茶をご一緒できませんか?」

純一は固唾をのんで温子の返事を待った。

「いいわ。」

「ありがとうございますっ!」

声が弾けた。

やった。

良かった。

「いつ?」

温子は週末の予定を頭に浮かべた。

何もない。

「では、次の土曜日の午後いかがですか?」

「オーケーよ。」

「待ち合わせ場所は後日メールします。」

「わかったわ。」

「それでは、失礼します。」

純一はベッドに横になり目を閉じた。

良かったと心底思った。

そして、

まだこれからだとも思った。

それにしても

彼女はどういう心境で会うと言ったのだろうか。

その理由が考えつかないまま

興奮冷めやらぬまま

ネックレスをどこで調達するべきか

あれこれが頭の中でぐるぐるして

なかなか寝つけなかった。

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