今夜も抱きしめていいだろ?
温子は両親と自宅に帰り

二階の自分の部屋で着物を脱いだ。

すぐたたまずに専用のハンガーに吊るした。

セットした髪を崩してブラシをかけ

楽なウエアに着替えて床にあぐらをかいたら

伸びをしたくなってそのまま寝ころんだ。

「あー、くたびれた。」

ほんの数時間の見合いで

今までにない濃い人間模様を見た気がした。

「あの連中、この先、女で痛い目に合うわね。」

帰り際に家政婦からもらった紅茶缶のラベルを指でなぞった。

「美味しかったな。」

デスクに缶を置いて窓の外を見た。

「よし、夕飯前に走ってくるかな。」

階下のリビングでは

父母が途方に暮れたようにソファに座ったままだった。

三十路直前の愛娘の良縁成就は前途多難であるという現実を知って。

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