堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「ああ。祖母はその話で瑠璃と盛り上がりたかったんじゃないかな。祖父は祖父で、当時、同じく祖母に好意を抱いていた現地のパティシエと祖母を取り合った結果、自分が勝ったという武勇伝を瑠璃に聞かせたかったんだと思う。かなり長話になるから、彼らが日本に来た時は覚悟しておいて」

 志門さんに釘を刺され、私はクスッと笑って頷いた。そんな楽しそうな長話なら、むしろ喜んで聞かせてもらいたい。

「ところで、引っ越しの件はご家族に相談できた?」
「はい。安定期に入ったらということで、母も兄も……兄の方は渋々でしたけど、賛成してくれました」

 認めたというより諦めたという感じの、意気消沈した兄の様子を思い浮かべて苦笑する。

「よかった。業者を手配しておこうか?」
「いえ、私の荷物の量なんてたかが知れているので、必要ないと思います」
「そうか。じゃ、荷物は俺の車に乗せてしまおう」

 私たちはふたりで相談して、できるだけ早く一緒に暮らそうと決めていた。赤ちゃんが生まれてくるまでに、まずはふたりの生活に慣れておかないと、絶対に慌ててしまうから。

 生活が軌道にのって落ち着いた頃には、婚姻届も提出するつもりだ。

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