堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「聞こえる? 志門」
《友里恵……。瑠璃になにをするつもりだ》

 手の中のスマホから、緊張感の滲んだ志門さんの低い声が聞こえる。

「なにって……私のプライドを傷つけた罪を償ってもらうのよ。あの夜からずっと、私は彼女が憎かったの」
《あの夜……?》

 友里恵さんはそこで私に向き直り、さげすむような目をして告げる。

「ウィーンでの仮面舞踏会、あれが京極建設御曹司の花嫁探しだと言う噂を聞きつけて、私も参加していたのよ。若い頃からずっと片思いしていた、志門に選ばれることを夢見て。なのに……」

 そこで言葉を切った彼女は、一層憎しみの色を濃くした瞳で私を見据えながら、じりじりと距離を詰めてくる。私は思わず後ずさるけれど、あと一歩で石段を踏み外す場所まで追い詰められ、逃げ場を失った。

「会場で彼の姿を見つけたと思ったら、冴えない東洋人の女と踊っているじゃない。仮面で顔までは見えなかったけれど、子どもっぽいドレスを着て、まともにダンスのステップも踏めない、誰がどう見たって私よりレベルの劣っている女と……それはもう楽しそうに」

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