愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
8月に入り、仙台の一大イベントである七夕まつりが過ぎ、そしてお盆がやって来た。


お盆期間は、ウチのチームは前半が遠征で、後半は地元で試合が通例。ちなみに一軍はその逆で、長谷川と付き合い出して、俄然張り切り出した菅沼さんは、その二軍の遠征中に遂に一軍に昇格。


「せっかく菜摘と付き合い始めたのに、ずっと離れ離れかよ。」


と早くも長谷川を名前呼びして、嘆きながら、福岡に旅立って行った菅沼さんを


(なに、贅沢なこと、言ってやがる。)


と思いながら、見送った。一軍に上がれて文句を言ってるのも、たかが1週間程度、彼女に会えないくらいでブツブツ言ってるのも、気に入らなかった。


こうして、相変わらず、二軍暮らしをしている俺だが、この遠征から帰れば、あいつが待っていてくれるはずだ。


そして、帰宅した俺は、自分のマンションなんだから、自分で開錠すればいいのに、あえてインターフォンを鳴らした。


「お帰り、お疲れ様〜。」


予想した通り、弾んだあいつの声が返って来て、エントランスの扉が開く。そしてエレベーターで上がって、自分の部屋の前の扉に立って、再びインターフォンを押す。


すぐにガチャリと扉が開くと、満面の笑みを浮かべた恋人がエプロン姿で出迎えてくれる。


「ただいま。」


もちろん、俺も笑顔で由夏にそう告げると、ぴょこんと飛び付いて来る。


「聡志〜、会いたかった!」


「俺もだ。」


GW以来、3ヶ月半ぶりの再会。2人きりの空間で、俺達は思いっきり、相手の存在を確かめ合う。


ようやくお互いを解放して、部屋に入れば、なんの記念日かと思うような、豪華な料理が食卓に並び、少しでも由夏の手間をなくそうと、自分なりに片付けて出たつもりの部屋も、やっぱり見違えるくらいに綺麗になっている。


「ねぇ、早く着替えて来て。お腹空いちゃったでしょ?早く食べよう。」


「わかった、サンキュー。」


そう言って、俺は着替える為に、寝室に入った。


久しぶりの彼女の手料理は、味もボリュームもバランスも文句なし。ガツガツと食べる俺の様子を、由夏は嬉しそうに眺めている。


食事が終わり、まったりとしていると、由夏が、ペッタリ貼り付いて来るから、俺はそんな恋人の肩を躊躇うことなく、抱き寄せる。
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