愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
球場を出た俺は、携帯を取り出すと由夏に連絡をとった。これから戻ることを伝える為だった。


だが、いつもなら、せいぜいスリーコールもすれば、「お疲れ〜」という明るい声が聞こえて来るのに、今日はいっこうに繋がらず、ついに留守電になった。


珍しいな、と思いながら、買い物でもしてて、気が付かないのかもしれないと思い、これから戻る旨を留守電に入れて、俺は車に乗り込んだ。


マンションに戻り、インターフォンを押すが、返答がない。球場からは随分前に出たはずなのに、おかしいなと思いながら、自分で開錠して、中に入った。


念の為、部屋の前で、もう1度、インターフォンを鳴らしてみるが、やっぱり反応がない。仕方なく自分でドアを開けると


「お帰り。」


と厳しい表情をした由夏が仁王立ち。


「な、なんだよ。お前、いるんなら・・・。」


驚いた俺がそう言い掛けると


「話がある、とにかく上がってよ。」


厳しい表情のまま、俺にそう言って、クルリと背を向ける由夏。このところ、甘えモードの由夏ばかり見て来たから、何事かと、戸惑いながら後に続いた。


「座って。」


ダイニングに入ると、いつもよりワンオクターブ低い声で言う。これは久々に見る完全なお怒りモード。


「なぁ、一体どうしたんだよ?」


恐る恐る聞いた俺を


「今日、球場で凄く懐かしい人に会ったんだ。」


と、まっすぐ見て言った由夏の言葉に、サッと血の気が引いた。


「誰だか、当然わかるよね。」


その由夏の言葉に、コクッと頷くしか出来ない。


「説明して欲しいんだけど。」


刃のような厳しい口調の言葉を突きつけられ


「先月から、長谷川がこっちに戻って来て・・・。」


「そんなことじゃないよ。」


ボソボソと話し始めた俺を遮る由夏。


「そんな経緯は、長谷川さんから聞いた。私が聡志から聞きたいのは、長谷川さんと再会して、それから連絡取り合ってることを一切私に隠してた理由。」


「・・・ごめん。」


「そんな言葉が聞きたいんじゃない。」


「由夏・・・。」


「携帯、見せてよ。」


「えっ?」


「私に隠れて、彼女とどんなやり取りしてたのか、見せてって言ってるの。」


そう言って、射貫くような視線で、見る由夏に、俺は素直に携帯を差し出した。
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