愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
夜に入っても、私の試行錯誤は続いていた。書いては消し、消しては書き・・・。昔は手書きの絵コンテ、今はパソコン。その作業の煩雑さは比べ物にならないけど、でも根気のいる作業だ。


(もう妥協するしかないのかな・・・。)


ふと、弱気の虫が頭をもたげる。でも、今日は徹夜も厭わないつもりで、来てるんだから・・・。


「まだやってるのか?」


既にみんな帰ったと思ったオフィスに声がして、驚いて振り向くと、そこには平賀さんの姿が。


「いくら電話しても、出ないから、もう帰ったのかと思ったら、やっぱり居たのか。」


「すいません。今日は集中したくて、携帯、カバンの中なんで、全然気が付きませんでした。」


今日は気になってた聡志の試合も中止になったし、緊急の連絡もないだろうから、ね。


「どうせ、晩飯まだなんだろう。ほら、差し入れだ。」


と差し出されたビニール袋には、近くのお寿司屋さんがテイクアウトでやっている海鮮丼が。


「えっ、いいんですか?」


「頑張ってくれてるからな。特別ボーナス、と言いたいところだが、無い袖は振れん。それで勘弁してくれ。」


「はい、ありがとうございます。いただきます。」


私は、さっそく包みを開ける。


「本社から、どこかへまわられたんですか?」


「ああ。丸山が知っている会社があるんで、そこへ顔つなぎがてらな。モノになるかはわからんが、とにかく今は少しでも顔を売って歩かんとな。」


「陽菜さんは?」


「帰った。お前に悪いと言っていたが、これはお前と俺の仕事だからな。」


そんな会話を交わしながら、私は箸を進める。とにかく、腹ごしらえをしたら、また作業に取り掛からないと。


その間、平賀さんは私の席に座って、デザインを確認している。


「イエローってわけにはいかないよな。」


「制服ですからね。」


「アクセント、か・・・。」


ポツンと、そう平賀さんが呟く。


「ご馳走様でした。」


私は空いた容器をビニール袋に入れるとゴミ箱へ。


「美味しかったです。これで、まだまだ頑張れそうです。」


「本当にまだやるのか?」


「はい。」


そう答えた私の顔を、平賀さんは見つめる。


「わかった。じゃ、俺も付き合うよ。」


「えっ?」


「さっきも言った通り、これは俺達2人の仕事だ。それにセキュリティがしっかりしてる本社ならまだしも、こんな雑居ビルのオフィスに、女子1人残して、帰れんよ。」


そう言って笑う平賀さんを見て、私は複雑な思いを抱く。
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