愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
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「いらっしゃいませ。」


大学生くらいだろうか。しばらく2人で仲良く服を選んでいたが、やがて本当に嬉しそうな顔をした彼女が、1枚のブラウスを手に、私の待つレジに立った。


「本当に、これでいいの?」


隣の彼氏が確認するように聞くと


「うん。」


頷く彼女。


「じゃ、これお願いします。あのプレゼントなんで、一応包装を。」


「かしこまりました。」


ちょっとはにかみながら、そう言って来た彼氏に笑顔で答えると、私は一旦レジを離れた。


「ごめんな。本当は俺が自分で選んで、プレゼントしなきゃいけないんだけど、女子の服のこと、全然わかんなくてさ。」


「ううん、いいんだよ。だって、あなたが女子服に妙に詳しかったら、なんかヤダもん。」


そんな会話が耳に入って来る。


それから数分。


「お待たせいたしました。」


と私が包みを差し出すと


「ありがとうございます。」


と満面の笑みで彼女が受け取ると、2人は仲睦まじく、レジを離れて行く。


「ありがとうございました。」


そう声を掛けて、一礼した私は、そのカップルを、微笑ましく見送っていた。


「いいなぁ・・・。」


思わず、そんな言葉が口をついて、ハッとした私は、慌ててレジを離れて、乱れた商品棚をたたみ直す。


このショップで働き始めて、早いもので、3ヶ月程になる。


人並みにオシャレに興味を持ったのは、中学生になったくらいだったかな。女子としては、ちょっと遅めかも。


デザイナーという仕事を明確に自分の将来の職業として意識したのは、高校生の時。とにかく可愛い洋服をいっぱい作りたい。そんなことを無邪気に考えてたなぁ。


そしてその目標を叶えて、無我夢中でやって来た3年強。大好きだったその仕事から、でも私は結果として、たった3年で離れることになった。


理由は寿退社・・・だったら、少し前の時代なら、鼻高々だったかな。ううん、本当に、その予定だったんだけど、予定は未定。ほんの些細なすれ違いがきっかけになって、私は大切な人を失ってしまった。


「由夏、そろそろお昼入って。」


「はい。」


ちょうど陽菜さんと同じ年頃のショップマスターの指示で、私は一旦売場を離れた。
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