愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
その後も、時間ギリギリまで、私達はいろんな話をした。そして堀岡夫妻にお礼を言うとお店を出た。来た時に比べると、だいぶ人通りの減った通りを、ホテルまで送ってもらって、私達は向き合った。


「今日はありがとう。久しぶりに会えて、いっぱい話し出来て嬉しかった。」


「俺もだ。このままサヨナラは、なにか足りませんって感じだけど。」


その意味がわかった私は


「もう。最近の聡志は会えば、そのことばっかりじゃん。」


とたしなめるけど


「仕方ねぇだろ。離れ離れで溜まってるんだから。」


「バカ!そんなこと面と向かって言うな。」


「いいだろ、お前以外の女に言うより。」


と全く悪びれないから、私はプイッと横を向く。


「わかったよ、悪かった。それで、明日試合は来てくれんだろ?」


「どうしようかな?ベンチにも入れそうもない選手の試合見に行っても、仕方ないし。」


「ひでぇな。とりあえず、明日はベンチには入るから。確かに試合に出られる保証はないけど、せっかく来てくれたんだし・・・。」


と一転、下手に出てくるから


「わかった、行くよ。」


と笑顔。ホントは最初から行くつもりだったけど、ね。


「ありがとう。じゃ、明日球場で。」


「うん、おやすみ。」


「おやすみ。」


そう言って見つめ合った私達。次の瞬間、私は背伸びをして聡志にチュッ。


「好きだよ、由夏。」


「私も大好きだよ。だからずっと応援してるからね。」


そう言って見つめた私に、1つ頷いて見せると、聡志は回れ右をして、帰って行った。


そして翌日、聡志の出場は結局なかった。だけど、私はある時はピッチング練習をし、ある時は一転キャッチャ-としてブルペンでピッチャ-のボールを受けたりと、慌ただしく動き回っている聡志の姿をずっと追いかけていた。


そしてゲ-ムセットと同時に、ベンチを出て来た聡志と一瞬アイコンタクトをすると、球場を後にした。帰りの新幹線の時間が近付いていたから。


新幹線の座席の着くと、聡志からLINEが入っていた。


『本当にありがとうな。今度はゆっくり会えるようにするから。仕事、頑張れよな。』


『ありがとう。またね。』


私はそう返信して、携帯をしまった。来る前から、胸の中にわだかまっていたある思いを、結局あいつにぶつけることが出来ないまま、私は仙台を後にしていた・・・。
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