キスは、想像以上に

放課後になった。
わたしは階段をあがって屋上へ行くと、蓮の後ろ姿があった。ドアの音に反応した彼が、振り返る。



「待ってたぞ、真由」



そう言って近づいてくる蓮。



「用って何?」



「目つぶって、じっとしてろ」



「はい?」



なんだか訳が分からない。



「すぐ終わるから、目開けないでじっとする。いいな?」



「分かった……」



わたしは言われた通り、目を閉じてじっとした。
彼の歩く足音が聞こえたり、細いものがわたしの首に触れたように感じられたが、何も見えないのでどうなっているか全く分からない。


蓮は、わたしの両肩に手を置いてから、



「もういい」



と言った。
わたしは目を開けて、首を見た。



「ネックレス……」



わたしの首にかかっているのは、銀色のハートのネックレスだった。

「お前、バレンタインにチョコくれたからお礼」



驚いているわたしを見て、彼は言った。
これをつけてくれるために、わざわざ呼んでくれたんだ。



「ありがとう、蓮」



満面の笑みを浮かべて、わたしは言った。



「似合ってて、そして喜んでくれて良かった」



まだわたしの後ろにいる彼は、耳元でそう囁いてくれた。




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