好きな子を守れなかった代償
イタリアにいる芽吹にもう想いを伝えられない。航は震える手で手紙を読み始めた。

『あの時、助けてくれてありがとう。私、寺本くんのことが本当は好きだった。こんな最後になってごめんね。映画の話を一緒にするの楽しかった』

とても短い手紙だった。しかし、航の目からは涙があふれて止まらない。本当は両想いだった。しかし、芽吹の言葉はもう過去形でこの想いは無駄だと教えられる。ジュリアが口を開いた。

「……あの子を助けてくれてありがとう。でも、あたしはあんたやあのクラスの連中を許すことはできない。いじめの傍観者だっていじめているのと同じだ。次は、最初から助けろよ」

航の涙が手紙を濡らす。胸の奥から流れ出すのは、後悔だけ。もっと勇気を出して彼女を助けていれば、彼女の居場所になれたかもしれないのに。

「……次は、誰かのヒーローになれますように……」

泣きながら、航は呟いた。
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