彼岸の狐
「はいはーいたっだいま〜」


「お帰りメトラ…って誰だよ其奴!!」


黒髪の短髪の少年はその場に立つ。

紫色のこの狐はメトラというらしい。

少年は顔をしかめながら少女を睨みつける。


「ああ、さっき人身売買されかけてた子だよ」

「それは聞いてねぇよ!!此処に連れて来たらダメだろうが!!」


少年はさらに顔をしかめる。

よく見ると左目と右頬に傷がある。


「あら〜可愛い子ねぇ。どうしたのよその子。」


髪を後ろで結った男が出てきた。額に傷がある。


「おい!!お前がそんなこと言ったら此奴調子乗るだろう!?此奴アジトに関係ねぇやつ連れてきたんだよ!!」

「まぁまぁ落ち着きなさいツララ。メトラが連れてきたんだからきっと理由があるのよ」

「でも…!!」

ツララと言う少年は訴えるように男を見るが男は気にしなかった。

そしてツララは根負けしたのかため息をついて座った。


「で?アンタなんでついてきたの」

「…殺して、助けて欲しかったの…。もう生きてるのが辛いから。生きてたとしてもまた暴力振るわれるし、それに…」

「あーあーあーわかった分かった」


ツララは少女の言葉を遮った。


「俺が悪かった」


少女は首を傾げる。

それもそうだろう。

何がなんだかわからないまま言葉を遮られたのだから。


「まぁ良いや。取り敢えずアンタが付いてきた理由はわかった。悪かったよ。じゃあちょっと来て。そのままの服装だとちょっとアレでしょ。」


そう言ってツララは少女の腕を掴んで引き入れた。

そしてそのまま二階に連れて行こうとしたが、一度振り返って


「絶対に部屋に来るんじゃねぇぞ」


と、低く脅しをかけて二階へ行った。


「まぁ怖いこと」


男はそう言ってその姿を見送った。
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