白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)
アルティメットの歌をバックに

 
◇◇◇◇

 十環先輩に頬を殴られたのが
 土曜日の朝だったから
 今日はあの日から2日後。


 まだアザがはっきりと残っている頬を
 隠すため
 マスクをして学校に向かった。


 廊下を歩くたびに
 聞こえてくる囁き声。


『十環先輩
 新しい彼女ができたんだって』


『元生徒会長で、十環先輩が
 昔付き合っていた人なんでしょ?』


『すっごい美人で
 シルキーの一人娘なんだって』


『いずれ十環先輩
 シルキーの社長かな?
 似合いすぎでしょ!』


 もう、十環先輩と結愛さんが
 付き合いだした噂が流れているんだ。


 2人のよりが戻ったのは2日前なのに
 噂が広がるのが早すぎでしょ。


 そう心の中で笑いながら
 突っ込んだ自分。


 そしてもう一人の自分が
 心の中で悲しそうな声を紡いだ。


 十環先輩、結愛さんと
 うまくいったみたいだね。
 良かったね。


 そう思った瞬間
 自分の顔が
 惨めで情けない顔になったのがわかった。


 ダメダメ、そんな暗い顔していちゃ。


 そう思うのに
 なかなか暗い顔をぬぐえない。


 は~と深いため息をついて顔をあげると
 前から十環先輩が歩いてきた。


 大丈夫! 大丈夫! 

 十環先輩の目を見て
 ニコッと笑える!


 そう思ったのに。


 いざ十環先輩と目が合った瞬間
 頭の中が真っ白になって。


 私は、180度ぐるりと回転して
 十環先輩と反対の方に
 走り出していた。


 そんな
 十環先輩を避けてしまう
 情けない学校生活を送り続け

 十環先輩は
 高校を卒業していった。

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