王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

(一体どうしたんだ? ついになにもかもやる気がなくなったのか? ふん。だったら最初からやる気など出さなければ良かったのだ。そうすればこんなに時間をかけることなどなかった)

ナサニエルが王位についたのは、まだ十五歳の少年のときだ。
そのとき、二十四歳だった侯爵は、十七歳の妹のマデリンを彼の妻とし、王の後ろ盾となった。

(あれから三十年……)

信頼のまなざしを向け続けていた彼が、侯爵に反抗するようになるのは五年ほどしてからだ。
そこから、ナサニエルからすべての権力を奪うための侯爵の長く静かな戦いが始まった。

議会の第一党を率いるようになり、実際に政治をまわしているのは侯爵だ。本来、王を蹴落とすことにそこまで執着する必要はないのかもしれない。

(私も、意地になっているのかもしれないな)

不意に侯爵はそんなことを思った。
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