王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

『大丈夫です。高貴な人たちは私のことなんて目に入ってないですもん』

使用人は彼らにとって空気のようなものだ。カイラ自身が侮られている状況では、彼女の侍女だからと一目置かれるようなことはない、とロザリーは言うが、ザックにしてみれば、こんなにかわいらしいロザリーが目に入らないのか不思議で仕方ない。

『ザック様?』

『俺にはロザリーしか目に入らないのにな』

そのセリフと口にした途端、ケネスから腕を小突かれた。
ロザリーも真っ赤になり、ナサニエルとバイロンは、目を見合わせて苦笑していた……が、ザックはなぜ注目されたのか分からない。

『あ、あの』

『ロザリー、なにがあっても自分の身を守るんだぞ。約束だ』

『は、はい!』

ザックは真面目な顔でそう話を締めたが、周りの視線がやたらとニマニマと生温かい感じでやたらに気になったのも事実だ。

「……俺がロザリーを心配して何が悪いんだ」

「君はホント。素でそれだもんねぇ」

拗ねた声を出すザックに、ケネスが笑った。

「まあ、これから暴動を起こそうというときに、そんな呑気なことを考えていられるあたり、君は大物だと思うよ。ただ、口説くなら人けのないところでしたほうがいいよ。ロザリー嬢が大分困っていた」

「は? 俺は別に口説いてなんか……」

そう言ってから、バイロンやナサニエルの視線の意味に気づいて、ザックは途端に顔を赤らめる。
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