恋を知らない花~初恋~
そしてようやく私の中に彼が侵入ってくる。

思わず声が漏れる。
その声を聞き、彼の興奮が増すのがわかる。

「きれいです。とっても…」

唾液も汗も混ざりあいドロドロなのに交わる。
大切に優しく身体中に舌を這わせられ、時に吸い付かれ声を上げる。

時間も忘れひたすら交わり続けた。
静かな部屋に2人の乱れた息づかいと、私の漏れ出る声が響きわたっていた。

普段おどおどして冴えない彼のいかにも彼らしい触れ方にイラつきを覚えながらも、見たことのない欲情した男らしい表情にひどく興奮していた。

声も嗄れ、息が上がり、きっと酔いもさめ、お互い力尽きた。

「はぁ、もぅ無理。動けない。シャワーは朝借りてもいい?」

「はい。俺も、このまま寝ます。」

ドロドロのまま2人くっついて眠った。



翌朝目覚めると後ろから優しく抱きしめられるように彼の腕の中にいた。
もともと特定の誰かと付き合うということをしたことのない私は朝、誰かの腕の中で目覚めるなんて初めてのことだった。

きっと誰か他の人のために買ったって言っていたその誰かはよく彼の腕の中で目を覚ましていたのだろう。
顔も見たことがない誰かを想像してなぜか胸がもやっとした。
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