恋を知らない花~初恋~
営業職にとって夏の外回りは厳しい。
どんなに汗をかこうとも身だしなみを乱すわけにはいかない。

私は教育係として新人の4名のうち何人か連れて親交のある会社に挨拶に回る日々を送っていた。
だいたい村田課長がいずれ任せようと思っている会社を振り分けておりそれに従って紹介して回った。

夏は夜の出事も増え、新人の顔を覚えてもらうために積極的に参加した。

村田課長の配慮で真中さんの会社には課長が付き添ってくれた。
今はまだ傷も癒えてないし営業スマイルで乗り越えるのは厳しく辛かったから本当にその心遣いがありがたかった。

そんな夏真っ盛りの頃にひさしぶりにジムで拓也に会った。
私自身、あまり通えてなかったからあの日以来だったけど拓也とは本当に普通に挨拶をして普通に話もした。
まるで何もなかった友人のように。
これが恋とは違う所なんだろうな。

「結衣が前、真中はきれいで自分が触れていい人ではないって言ってた意味がようやくわかったよ。見合いの相手さ、男性経験はないんじゃないかって言うくらい純粋な子なんだ。いちいち顔を赤くして、手を繋ぐのがやっとだよ。」

「へぇ~、可愛いじゃない。じゃあまだ手しか繋いでないんだ?」

「あぁ、正に手しか繋いでないよ。この俺が…」

そう言って優しく微笑んでる拓也は幸せそうだった。
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