ボードウォークの恋人たち



ハルが小学生高学年の頃、夫婦仲がよくなかったハルのお母さんが家を出てハルは弁護士のお父さんと二人暮らしになった。

当時はまだ別居だった。
ハルが中学に上がる頃独立開業したお父さんの仕事が忙しくなってハルは家で1人で過ごすことが多くなった。
ハルが二ノ宮の家に来るようになったのはこの頃だ。

ハルの家庭状況を知った二ノ宮の母はすぐさまハルの父親に連絡を取り、ハルが二ノ宮の家で食事をとることを許可して欲しい頼んだ。
しかし、最初はハルの父親はいい顔をしなかったそうだ。

「変なプライドがあったんだろうな。うちは家政婦を雇っていたから息子に不自由はさせていないとか」
ハルのお父さんの気持ちもわからないではない。

でも二ノ宮の母はそこを押し切り、自分の息子の塾の送迎のついでとか共に勉強することで切磋琢磨させるとかいろいろ理由をつけハルのお父さんのプライドに配慮した言い方をしてとうとう丸め込んだらしい。

それからハルが平日の大半を二ノ宮の家で過ごすのが当たり前になったけれど、そんな環境に変化があったのはハルが高校生になり進路を選択する時期になった時だ。

ハルのお父さんは、ハルが自分の跡継ぎとして法学部に進み弁護士になるのだと思っていた。
でもハルがそれを拒絶し医師になりたいと告げたことで父と息子の関係が悪くなった。

もともと忙しい父と息子は同じ家に住みながら顔を合わせる時間がほとんどなかった。

ハルが高校生になった区切りでハルの両親は正式に離婚していて、ただでさえ別居から疎遠になっていた母親とは完全に縁が切れた状態になっていた。

だからハルが進路を相談できる肉親はいなかった。

ひとり息子のハルが自分と同じ弁護士にならず今や自宅にいるより長い時間を過ごす二ノ宮の家と同じ医師になりたいと言い出したことでハルの父親の感情が爆発してしまったのだという。

「医者になるのなら一切学費の援助はしない」

何度話し合ってもハルの父は態度を変えず、困ったハルは高校の担任に相談したけれど、どうにもならず困り果てた。

そんなハルの様子がおかしいことに気が付いたのは親友である二ノ宮の兄と母で、ハルの状況を聞き出すと迷わず二人は二ノ宮の父に相談した。
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