ボードウォークの恋人たち

水音の結婚

HARU side


***



帰国してからまだ二ノ宮の父と会えていなかった。
何度か面会をお願いしたのだが、時間がとれないと秘書を通じて断られていた。

帰国直後はこちらが就職手続き、マンション探し、学会準備と慌ただしくしていたこともあるが、二ノ宮の両親も水音の引越しに合わせて北米に長期視察に出掛けてしまったことも一因だ。
しかし、何度頼んでも二ノ宮の父と面会の約束を取り付けることはできなかった。

ハルの大学の研究室通いの合間の二ノ宮総合病院の当直のアルバイトとふたば台病院の外来診療の非常勤の勤務医というポジションは二ノ宮の父の許可を得た暁人が用意してくれたものだ。

水音の見合いをぶち壊したことで二ノ宮の父が怒っているからだというわけではない。

後日、お相手の大江医療機器の社長と御曹司に直接謝罪したところ、お互い様なので必要ありませんよと彼の父親である社長は終始笑顔だった。
何でも息子には海外にはっきりしない関係の女性がいたそうで、今回の見合いをきっかけに彼女は帰国して結婚することになったとか。

なるほど、それで”お互い様”なのか。

おそらくどちらの父親も本気で自分の娘息子とを結婚させる気はなかったということなのかもしれない。
はっぱをかけるつもりで組まれた見合い話。これをきっかけにして中途半端な関係のままでいる相手と結ばれるのもよし、見合い相手をお互い気に入って結婚するならそれもよしといったところか。

・・・それにしても、
もう少しでハルが帰国するだろうことは二ノ宮の父の持つ情報網ならば知っていたはずなのだ。
だからどうしてこのタイミングで、と疑問だった。
そして、二ノ宮の両親の長期視察旅行から戻ってきた後も面会を断られている現状がハルには理解できない。

まさか、二ノ宮の父は本気で水音を大江医療機器の御曹司と結婚させてもいいと思っていたのではないかという気もしてくる。もちろん、気のせいならいいのだが。

結局面会できたのはハルが帰国してからずいぶん経ったハルの退院後のことだった。


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