ボードウォークの恋人たち
「さっさと帰って部屋でのんびりするか」

「もうお出かけはいいの?」

「ああ。外デートはこんなもんでいい。後はおうちデート」

おうちデート

年に似合わない可愛い言い方にぷっと吹き出すと「なんだよ」とムッとしている。

「はいはい、おうちデートね。ふふっ」

なんだかおかしくて笑いが止まらない。結局、公園を出るまでクスクス笑ってしまった。

「笑ったり拗ねたり忙しいヤツ」

呆れたように言うけど、ハルも笑いながら私に手を差し出してきたから私もその大きくて温かい手を取ってしまった。触れ合った途端お互いに指と指をを絡めるようにしてしっかりと繋がれる。

こんな恋人繋ぎにためらいがなかったわけじゃない。
でも今日はハルの望んだデートなんだし。
お祝いできなかった数年分の誕生祝いだし。
ハルから手を伸ばしてきたんだし。

いろいろ言い訳したけど、要は私も繋ぎたかったのだ。
昔も一緒に出歩いたことはあるけれど、夏の混雑した花火大会の迷子予防以外でハルと手なんて繋いだことはない。

ちょっとだけ恋人気分を味わってもいいよね、ハルだって私の婚約者だって職場で言ってるくらいだから今は特定の彼女はいないだろうし。



・・・って調子に乗ってたのかもしれない。

私の隣にいるこの男は周りが放っておいてはくれない男だった。
過去も現在(いま)
< 90 / 189 >

この作品をシェア

pagetop