Sweetな彼、Bitterな彼女

「紅って……ほんとに、めんどくさくて、馬鹿な女」


詩子は額を押さえて天を仰ぎ、わたしは自嘲気味に答える。


「否定はしない……」


その場に流れる重く、憂鬱な空気。
今日はヤケ酒確定か、と思ったその時、緑川くんがいきなりわたしの腕を取った。


「紅さん! 記念に観光客らしい写真、撮りましょう!」

「は?」

「詩子さん、お願いしますね!」

「そうね……ちょっとは観光客らしいことしないとね」


詩子は、肩を竦めて緑川くんからスマホを受け取った。


「え、ちょっと、詩子……緑川くんっ!?」

「紅! ちゃんとこっち向いて」


緑川くんに腕を組まれ……というより、がっちりホールドされた状態で、この街の象徴であるタワーをバックに写真を撮られる。


「うん、いい写り!」

「あ、本当ですね? SNSで自慢しようかな」


詩子と二人、画像を覗き込んでいた緑川くんが突然そんなことを言い出す。


まさか公開されるなんて思ってもいなかったわたしは、慌てふためいた。


「ちょ、ちょっと待って、それっ……」

「大丈夫ですよ。友だちしか見られないようにしてありますから。紅さん、このあと何か予定ありますか?」

「ないけれど……」

「じゃあ、一緒に観光しましょうよ! ね? 詩子さん」

「そうよ。最初からそのつもりで来たんだから。まずは、パワースポットから攻略するわよ」


詩子に見せられた画像は、北の国で最大の神社。


「近くに動物園もあるし、二大癒されスポットでしょ」

「どっちも、学生の時以来行ったことないんだけど……」

「じゃあ、きっと楽しめますね?」


意外と押しの強い緑川くんに、にっこり笑って同意を求められ。

詩子には、「もちろん行くわよね?」と睨まれ。



わたしは、渋々頷いた。

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