年上同期の独占愛~ずっと側に
タクシーなら呼びますよ、とマスターも気遣うように、声をかけてくれたが、じゃあタクシーくるまでもう1杯と弘美が言い出しかねないので、神田さんに弘美を抱えてもらってタクシーに乗ってしまいたい。

「ありがとうございます。でももう出ますので。お騒がせしてすみません。」

神田さんが来てから私たちにしつこく絡んできていた男性2人もいつの間にか離れていた。あのままだったら、弘美がお持ち帰りされてたかもしれない。
お会計を済ませ、3人でBarを出る。

「弘美ちゃん、結構飲んだの?」

「そうなんです。ちょっとピッチ早くて。しかも強いの選んで飲んでたので。」

「気を付けないと・・・」

「本当に。私が付いていながら、反省してます。」

「ククッ。この前お前が酔っぱらったときも、弘美ちゃん同じように心配してたぞ。お前も気をつけろよ。」

神田さんが笑いながら言った。
そうか・・。弘美が珍しく私に口うるさくお説教をしていたが、今の私のような気持ちだったのか、と今ならわかる。弘美がつらいのは手に取るようにわかるし、悲しみが少しでも薄れるのなら力になりたいと思うが、お酒の力を借りている弘美を見ているのは心配でしょうがない。今日は私が一緒だったからまだよかったものの、これを一人でやられたらたまったもんじゃない。弘美のことが心配でたまらない。

表通りに出て、私がタクシー捕まえると、神田さんが弘美を乗せてくれた。続いて乗る私に向かって手を挙げて合図してくれる。私も手を振り返すと運転手さんに弘美の家の住所を言って向かってもらう。弘美は目はつむったままだが、半分起きているらしく、小さい声で、萌々香さんごめんなさい、と何度か言っていた。全然いいよ。気持ち悪かったら言ってね。と言って弘美の頭を撫でた。

それなりに長く付き合っていた彼との別れはつらかっただろう。結婚だって考えてたのかもしれない。弘美のこの悲しみを時間が解決してくれることを心から祈った。

弘美の部屋に着き、寝室のベッドに弘美を寝かせた後、コンビニに買い物に行こうとカギを借りて部屋を出ようとしたとき、玄関横に荷物が積んであるのが見えた。本や洋服が袋に入れてまとめてあり、彼氏が置いて行った荷物だとわかる。弘美がどんな気持ちで彼の荷物をまとめたのかと思うと、涙が出てきそうだった。

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