年上同期の独占愛~ずっと側に
橋本side

泣かせてしまった・・・。
今日、野崎さんに告白するつもりは全くなかったのに、つい抑えきれずに抱きしめてしまった。
緒方さんの異動が決まり、送別会の席で半べそをかきながらも必死に話をしている姿が可愛くて・・・おまけに酒が入ってほんのり頬を赤くして目が潤んでいて色っぽくって。
そんな彼女を目の前にしてもう我慢の限界だった。

一年半前、彼女がプロジェクトに配属になってからずっと気になっていた。
向こうは知らないかもしれないが、同期だということは入社当時から知っていた。大学の研究所で一緒だった尾崎の恋人の亜都子といつも一緒にいた。亜都子とは挨拶程度しか会話をしなかったが、それでも俺からしてみればいつも一緒にいる萌々香のこともすっかり知っている気になっていた。

飛びぬけて美人だというわけではないが、清潔感があり、全体的におっとりしたた印象なのだが、亜都子と話している様子をみると、見た目と違って意外に隙がなく、キリリとしたた喋り方をする。しかし、黙って人の話を聞いている表情は途端に優し気な印象になる。

一緒に仕事するようになり、いつも自信無さげな彼女のことを放っておくことができず、何かと気にかけていたが、飲み込みも早く統括に馴染むのもすぐだった。
最初こそ資料作りに時間がかかっている様子だったが、彼女の仕事はとにかく無駄がない。どちらかというと大人しいほうなのだろうが、意外に言うことが容赦なかったりする。
しかし嫌みがないので敵をつくったりすることも全くなく、むしろ効率的に物事が進んでいるように思える。
同じ統括の先輩方、原さんなどに言わせると、もう少し根回しやら細かいところに気遣いつつ、積極的に動いてほしいのだろうが、同期の俺からみたら十分優秀に思えた。

彼氏らしき人とビルの前で待ち合わせしているところを何度か見かけた。
その人と一緒にいるときは途端にふわりと優しい印象に変わる。甘えるように彼氏を見つめる彼女の顔を見て、胸がチクりと傷んだ。

その頃から、同じ研究室だった後輩で別の企業に就職した恋人と上手くいかなくなってきた。
元々、同じ研究室にいた頃は研究室で毎日顔を合わせていたため、一緒に帰りそのまま食事に行ったりしていたが、生活が別になると、お互いあまり連絡をとらなくなり、予定を合わせてデートをするようなことも少なくなってきた。

< 219 / 228 >

この作品をシェア

pagetop