裏切り

翼side


奥菜さんから連絡があった。

離婚届が受理された事と
共有財産の金額提示
俺は自分の口座を綺麗にして
保険の受け取り名義を変えて
病院にも報告した。

病院の人達には
同情より、良かったじゃない
と安心されてしまった。

そうだな、子供がいたら
こんなに簡単には
いかなかっただろう

俺は次の休みに
自分の荷物を引き取りに行く
奥菜さんも手伝ってくれると
言って貰え
「弁護士さんって、
そんなことまでやってくれるの
ですか?」
と、びっくりして訊ねると
「しないでしょうね、普通は。」
と、さらりと言う
「 ん? 」
「何でかな、あなただから
進藤さんだから、かな」
と、言われて
「クスッ、ありがとうございます。」
なんか気持ちが軽くなった。

片付けが早く終わり
奥菜さんにお礼をかねて
一緒に食事をした。

必要な物は、全て持ち出した。
後は要らないので
梓に廃棄してもらう。

それは、奥菜さんから
「それくらいやらせれば良い。」
と、言って貰えたから。

部屋の鍵を奥菜さんに渡して
結婚指輪は、必要ないので
梓も捨てるように言ってほしいと
お願いした。
返されても困るし。

俺は、家具家電付きの部屋を
借りていた。

キッチン用品や食器は
困らない位には揃えた。

父親に住所の変更を知らせた。
離婚をしたことは、残念がっていたが
理由が理由だけに
「優の目は、確かだったんだな」
と、悲しそうに言っていた。
「ごめんな。孫を抱かせてやれなくて」
と、言うと
「俺は、諦めてないよ。」
と、笑って言っていた。

親父にも報告を済ませた
年をとった、たった一人の肉親に
心配かけてしまって情けなかったが
明日から、また新たに頑張っていこう
と心に誓った。
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