"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

これから。




新しい年が始まり、一月はレポート課題と試験に追われ、二月。

友人にお願いしていた合コンに三回は参加して、そのうちの何人かとも連絡を取るようになったけれど、気が進まないでいた。

画面の中の文字横の縦棒がずっと同じところで止まっている。


「デートの話が進まない感じ〜?」

しゃがんでいる千葉崎の声が下から聞こえて来る。
立っている俺のスマホ画面は見えないはずなのに、まるで見えているようなことを言う。

まさに今、何度目かのやりとりの後、「今度二人で会いませんか?」というメッセージが来ていて、それにどう返事をしようか迷っているところだった。


「……この件に関してお前に何も言ってないよな?」

「やだなぁ〜、ゆ〜君。大学生の合コン事情に守秘義務なんてもんは存在しないだろ?」


その通り。誰がどの合コンに参加したというのも、どういう子が好みというのもどこかしらで共有されているものだ。

ただ、誰と誰が今どの段階かなんてことは当人たちにしか分からない筈なのだが。

お喋りならともかく、俺はセッティングしてくれた友人にすら連絡先を交換したことしか伝えていない。

その後のことは何一つ。

やはりこの男はなんだかんだ鋭い。


「なーんで、悩んでんの?」


合コンの所要時間は大体三時間。
その三時間で分かるのは名前と顔、趣味や特技、そんなお決まりのことばかりで、その人の本当の姿なんてものは結局わからない。

分からないからこそ、次に繋げるために会って、もっと話して互いのことを知る。

そこでようやくスタート地点。

合コンはそのスタート地点に立つための自己紹介の場というだけだ。

お互いを知る、その最初の段階に立たなければ何の意味もない。だから、悩む必要なんてないはずなんだ。

< 136 / 259 >

この作品をシェア

pagetop