"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
リュックに入るだけ日用品を入れたおかげで手荷物は少なく済んだ。そうでないと、この坂は上れない。


「あっちー」


なるべく日に当たる時間を減らすために早歩きで坂を上る。帽子を被っていても頭頂部が熱い。露出した肌が焼けつくようだ。


坂の中腹に差し掛かると、大量の買い物袋を持ってよたよた歩く女性の後ろ姿が見えてきた。


真夏なのに見ているだけで暑そうな長袖のシャツに足首まであるジーパンというスタイル。

流石に暑いのか、髪をざっくりとまとめてお団子にしている女性の首に汗が伝う。

シャツから覗く首元が火照って赤くなってはいるが、赤い箇所の周りが驚くほど白く、妙に色気があってドキリ、とする。

まさかと思って通り過ぎる際に顔を見やれば、やはりそうだ。


「相沢さん」

「ん〜?あ!町田くん!こんにちは」


へにゃ、と笑う琴音の頬は真っ赤だった。


「大丈夫ですか!?荷物持ちますよ」

「全然平気〜!!これくらいなんのこれしき!」


威勢よくレジ袋を持ち上げたがすぐに力尽きて項垂れた。


「待ちます」

「………へへっ、買いすぎちゃったかなぁ。じゃあ、こっちの軽い方を、ってあーーー!」


軽いと言って渡そうとした方とは逆を取り上げる。洗剤のような液体類が入っているのか、確かに重みはあるが大したことはない。

だが、女性にはきつい重さだと思う。おまけにこの坂を上ることを考えるとしんどい。まだ残り半分もある。


「ごめんね」

「こんなの、相沢さんが庭掃除してくれたことの半分にも及ばないですよ」

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