"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

大学3年、夏。

杞憂だったんだと思う。

中間テストを終え、衣替えをした。

雑草が活発になり始め、抜いても抜いても生えてくる季節になってきたので外での作業時は上にパーカーを羽織るようにしている。


「もうすぐだね」

塀越しにミニトマトを眺める畑の師匠である琴音の言う通り、ちらほらと緑色のミニトマトが見られるようになってきた。

後は伸びた枝を整えながら収穫を待つのみだ。


作業を終え、パーカーを脱ぐ。

まだ梅雨に入ったばかりで夏本番には入っていないのに庭いじりをしていると暑い。

本格的に夏を迎えたら、庭いじりをする時はもう少し薄手の長袖の服を着ないと倒れてしまう。


「相沢さん、暑くないですか？」

約一年、隣人として過ごしているが春夏秋冬を通して七分丈よりも短い袖の服を着ているところを見た事がない。

首元のボタン一つを開けているとはいえ、今日も手首まですっぽり覆うシャツを着ている。

「今はまだ平気！でも、夏になってくると流石にね〜。だから夏はタンクトップとかキャミの上に薄手のシャツでなんとか凌いでるんだけど、暑いよね」

「半袖は着ないんですか？」

「うん、着ない」