"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「あんた、彼女と回るんじゃなかったの?」
「そうだよ。彼女が酒井を追いかけろって。友人の泣きそうな姿を放っておくなって言ってさ。だから追いかけてきたわけ」
「別に、泣きそうになんかなってないけど」
「またまた〜。今泣いてるじゃん?」
頬を流れる滴にハッとし、慌てて拭おうとするとハンカチを差し出された。
普段ならそんなものなくても手で顔を拭う所だが、今日は友人達がしてくれた努力がある。それを無駄にするわけにもいかないし、戻ったときに怪しまれるのも嫌だ。
千葉崎からハンカチを受け取って、涙を拭った。
「……サークルのみんなにはバレてんのにねぇ。なーんで本人には伝わらないんだか」
「バレてるって、まさか私のことじゃないよね?」
「酒井がゆ〜君を好きなことで合ってますけど」
唖然とした。バレているだなんて思わなかったのだ。
涙も引っ込む。
「いつから!?」
「ゆ〜君が教育学部のかわい子ちゃんと別れてすぐかな〜。だから、みんなゆ〜君は狙わなかった。あいつ来るもの拒まず去るもの追わずだし。本気で狙ってる子がいて、それが仲良い子なら勝ち目ないと思うし?じゃあ、みんなで見守るか!みたいな」
「でも、誰も悠介のシフト教えてくれなかった!」
もし本当にみんなで見守ろうとしていたのだったら、誰か一人くらいは手助けする人がいても良いはずだ。
千葉崎は嘲笑った。
「誰が一番上手く聞き出せると思ってんの?俺しかいないじゃん。それに、酒井がその手のことで揶揄ったら天邪鬼だから違うって否定すんのを分かってんだろ。俺みたいに楽しんでるやつは別として、普通は見て見ぬ振りしてくれるんじゃない?」
衝撃で言葉も出ない。
千葉崎にはバレているだろうということは分かっていた。
こういうことに敏感な奴だし、常に揶揄ってくるのも、絵里の気持ちに気付いている証拠だった。
今まで、そんな暖かな目で見守られていたなんて。そう思うと、これまでの悠介とのやりとりを見られていたことが恥ずかしくなってきた。