溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 「苦しい時は薬を飲んでいいんだ。無理はしない方がいい」
 「………けど」
 「これはメモリーロスじゃない」
 「うん。わかってる、わかってるけど………」
 「沢山怒られて、自分のしたことが間違えだったんじゃないかって罪を感じてる」
 「え………」


 風香は驚いて彼の顔を見上げた。
 どうして、自分の気持ちがわかったのか?と、驚いたのだ。
 すると、柊は「やっぱりそう思い詰めたか」と、優しく微笑んだ。


 「誰が非難しようと、俺は風香のした事は心強かったし、かっこいいと思ったよ。そして、そんな風香を支えたいって改めて思った」
 「柊さん………」
 「頭が痛くなったら、すぐに呼んで。君が寝るまでぎゅっとしてあげるから」
 「本当に?」
 「あぁ……だから、俺に甘えてよ。久しぶりに風香に甘えて貰いたいんだから」
 「甘えていいの?じゃあ、一緒にお風呂入りたい!」


 柊が提案に風香が勢いよく飛び付き、そう言うと柊は「何回でも一緒に入るさ。風香は本当に欲がないな……」と苦笑していた。
 風香は柊とお風呂に入るのが大好きだった。付き合い始めた時は、恥ずかしくて苦手だったけれど、今では彼のがっちりとした体に抱きしめられながら、柊の昔の話しを聞くのが好きなのだ。


 「そんな事ないよ!それが1番落ち着くから。ほら、記憶がなくなっていた時は柊の昔の話し聞けなかったから」


 昔の話しというのは、柊が学生の時に行っていた海外での話しだった。お金を貯めては単身で海外を旅していたのだ。その時の話しが風香にとってはとても新鮮で魅力的だった。
 柊が記憶喪失になって、風香と付き合っていた事を忘れていたと思っていたので、柊にその話しをしてもらう事が出来なかったのだ。

 久しぶりの2人でのお風呂タイム。

 風香はお気に入りの入浴剤を入れて、その時間を楽しもうと思った。
 きっと、柊がいれば薬の離脱症状にも耐えられるはずだ。


 そう信じていた。




 
 
 
 
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