溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
10話「同じと違い」





   10話「同じと違い」




 恋人に戻った2人のキスは初々しくも、しっくりとくる不思議なものだった。
 触れるだけのキスを何度か繰り返した後、柊は風香とアスターステラホワイトの花ごとゆったりと抱きしめてくれた。


 「よかった………これで俺の恋人なんだね。何だか幸せすぎて、信じられないぐらいだよ」
 「ふふふ……本当に?柊さんは私が柊さんを好きだって気づいてたと思ってたけど」
 「それは……気を許してくれてるかなとは思ったけど………俺と似てる人が好きなのかと思ったから。告白はかなり勇気がいったよ」
 「………好きです」
 「え?」
 「『柊さんが』好きなんだよ」
 


 柊に嘘をついている事。
 話せない理由がある事。
 
 彼とこうやって恋人になる資格などあるのなと悩むけれど、だけど以前と変わらない事がある。
 それが柊を好きだという気持ちだった。

 離れたくない。
 誰にも取られなくない。
 また、好きになってほしい。

 その気持ちが風香の背中を押してくれてのだ。

 柊の記憶が戻ったら、しっかりと謝ろう。
 そして、また自分を選んでくれてありがとうと伝えたい。そう思った。



< 51 / 209 >

この作品をシェア

pagetop