溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
14話「一時の安堵」
14話「一時の安堵」
★★★
「柊さん!風香さんから連絡です。自宅に不法侵入をされたようで部屋が荒らされているとの事です」
「なっ…………!!すぐ行く!」
柊は上司と共に今後の捜査の事を話し合っていた。その時に飛び込んできたのが、風香の事件についてだった。
柊はすぐに立ち上がり、上司にお詫びをした後急いで現場である風香の自宅まで向かった。すでに110番に通報もしてあるという事で、柊は舌打ちをしながら署内の廊下を走った。
こんな事は早く止めてしまいたい。
それなのに止める事は出来ないのだ。
真実を風香は話す事など、柊には出来ないのだ。それが悔しくて堪らなかった。
「風香、ごめんね………」
柊は自分の弱さを実感しながら、そう呟いた。
今、彼女は一人で不安になっているはずだ。
だからこそ、風香の傍にいて少しでも安心させてあげたい。守ってあげたい。
やっている事と気持ちに矛盾があるのかもしれない。
それでも、風香を笑顔にしたい。
その思いだけは同じだった。
「待ってて………今、行くから…………」
柊は、手を強く握りしめて、彼女の元へと向かったのだった。