溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 気づくと風香は彼の腕の中で涙を溢していた。
 突然の不法侵入は、柊の行方不明と記憶喪失という大きな事件で戸惑いと不安があった風香の心に、更に負荷を与えたのだ。
 ただでさえ、考えなければいけない事、悲しい事が増え、風香の感情は不安定になっていたのに追い討ちをかけるように今回の事件が起こった。

 けれど、今回の事件については風香は一人ではなかった。柊に相談し、支えて貰えるのだ。
 こうやって、頭を撫でて気持ちを吐き出せる。そして、受け入れて貰える事がとても幸せだった。


 「俺が風香ちゃんを守るよ。だから、安心して欲しい」
 「うん………ありがとう、柊さん………」


 いつだって、こうやって彼に抱きしめられて安心し、元気を貰ってきた。
 それは今でも変わらない。それが嬉しい。


 

 風香は、今だけでもいい。
 何もかも忘れて、彼に甘えてしまいたかった。



 
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