もう一度だけ、キミに逢いたい。

大体、緊張する理由も見つからないし。




「……なぁ、ゆり」


「…ん?どうしたの?」


「……俺のこと、聞いてくれないか」


わたしは彼がさっきのことを言っているのが分かり、じっと彼の顔を見つめる。




「……月島くんがわたしでいいなら。でも、無理して話す必要はないと思うよ」


「……ゆりに聞いてほしいんだ。他の誰でもないゆりに」


そう言う彼の目は至って真剣で。


「……分かった。そこまで言うなら聞くよ」


わたしの言葉に、彼はありがとうと言ってわずかに穏やかな表情をした後、ゆっくりと目を閉じた。




「俺んち……父子家庭なんだ。母は、小学5年生の時に亡くなったから。父は仕事人間で、滅多に家に帰って来ない。二つ下に弟もいるけど、仲良くなくて…。というか、一方的に避けられてるんだ…」

< 79 / 471 >

この作品をシェア

pagetop