人格矯正メロディ
「ねぇねぇ、コトハと田村ってお似合いだよね?」


それは暇を持て余したクラスメートの一言だった。


友人たちを会話を楽しんでいたあたしは視線をそちらへ向ける。


女子2人がコトハの机の前に立ってニヤついた笑みを浮かべている。


咄嗟に声をかけようとして、思いとどまった。


コトハになにが起きようとあたしには関係のないことだった。


コトハから近づいてきてくれたり、助けを求めたりすればあたしはすぐに動くつもりだった。


でも、コトハはそれもしなかった。


「ほら! 付き合えよ2人とも!」


無理矢理田村の隣に立たされ、笑われるコトハ。


一瞬、顔をあげたコトハと視線がぶつかる。


その表情は歪み、苦痛に耐えているのがわかった。


きっとそれがコトハからのSOSだったに違いない。


言葉にならない声を聞きとる方法は、両親のせいであたしにはすでに備わっていたから。


でも、「星羅ちゃん」と呼ばれたことで、あたしはそこから視線を外してしまった。
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