人格矯正メロディ
長かった前髪は眉の上まで切り、充血していた目は生き生きと輝いていた。


ほんの数日で人がここまで変われるとは思えない。


例え変わる事ができたとしても、その本質は変わらずどこかに影が潜んでいてもよさそうなものだ。


しかし、ユズの場合は全くそんなものも見られなかった。


まるで元々明るく活発な性格だったようにふるまっているのだ。


そしてユズ自身もそれが当然のことのようで、なんの違和感もなくクラスの中心にいた。


その光景を思い出すとまた足が速くなった。


一刻も早くこのアプリを海にも使いたい。


そして出会ったころの海のように、優しく勇敢な人になって欲しい。


よく晴れた空も、あたしのことを祝福してくれているように感じられた。


大通りを抜けて公園を通り抜けると、海の家はすぐ目の前だった。


あたしは来馴れた赤い屋根の家の前で立ちどまり、一度大きく深呼吸をした。


大丈夫。


今日はアプリがあるから、きっと海に殴られることもないだろう。


そう思うと自然と頬が緩んだ。
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