メーティスの骸
そして翌日、玲奈は透たちを叩き起こした。その目は徹夜をしたというのにちっとも疲れを見せていない。

「あのエサは、ただのエサじゃない。牛の骨が入っていた」

玲奈の言葉に、透は一気に眠気が覚める。そして口からは「はあ!?」という声が漏れた。美咲と洋一も驚いた顔をする。

「しかも、エサとなった牛たちはある病に感染していることがわかった。それはーーー牛海線状脳症」

透たちの目は真剣なものになる。そして、互いの顔を見合わせた。

「牛海線状脳症って狂牛病とも呼ばれる病気だよね?」

美咲が訊ねると、玲奈がゆっくりと頷く。透は寒気を抑えられなかった。

「確か……牛の脳の中に空洞化できて、スポンジ状になる病気。その病気に感染した牛を人間が食べると、人間も感染する」

透の呟きに、「イギリスで見つかった病気だよ」と洋一が言うとリビングの空気が凍りついた。

「恐らく、牛海線状脳症になった牛を殺処分してその焼いた骨を安全だと思ってエサにしたんでしょう。でも、安全ではなかった。性格が攻撃的、あるいは沈鬱状態となり、体重減少、異常姿勢、強調運動失調、麻痺、起立不動などの症状が出て島民たちを死に追いやった」
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