不器用オオカミとひみつの同居生活。


でも、この前みたいに乱暴じゃなくて触れるだけの優しいキスだった。


離れていった花平くんの目をみて、私はあることに気づいてしまった。



てっきり電話の声がうるさくて、だと思ってたんだけど……


あのとき花平くんは、さきに仕掛けてきたのは私だと言った。



すうちゃんから電話がくる前、私は何をしていたっけ。


あの日も、今日とおなじように……





「────そういう、ことだったんですね」



やっと気づいたか、とでも言いたげな花平くんが口角を持ちあげる。


わかりにくいんですよ、と口パクで返した。




『憂?どうかした?』


お母さんの不思議そうな声に、まだ電話中だったことを思い出す。





「ううん、ひみつ」



そして、今度は私のほうからキスをした。


次は外さないように、ちゃんと。





“上出来”



べ、と舌を出す花平くん。


私はもっと、べーっと舌を出したのだった。


< 399 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop