優しい温もり【完結】
いつの間にか桜は散り、新緑の季節になっていた。

今年はゆっくり花見も出来なかった、と少し残念に思いながら
待ち合わせの店に向かっていた。

今から俺は自分の店 ダイニングバー”GREEN”で、親友と会う約束をしていた。

いつもこんな時間に現れるはずがないから、奴は遅れてくるだろう。
また俺は奴を待つのだろうと思いながら、店のドアを開けた。


でも今日は違っていたらしい。
店にはもう奴が着ていた。

「よっ、大樹。 早かったな。」
珍しいこともあるものだと思いつつ、親友でありビジネスパートナーである大樹に声を掛けた。

「おせーよ、頼。
お前遅いから”ひめ”捕まえて飲んじまっただろ。」

なんだよ。いつもはお前が遅れてくるくせに。
今日は自分が早かったからって・・・・。
大樹を軽く睨みつつ、奴の横に目を向けた。

そこには若そうな女性が座っていた。
さっき大樹”ひめ”って言ったっけ。
ひめ”って誰だ?・・・・めずらしくナンパでもしたか?
なんて思いながら大樹に目を戻す。

「わるい わるい。ところで”ひめ”って?」
とりあえず、気になったので聞いてみた。

「頼 初めてだっけ? 俺の妹 ”みゆひめ”」
大樹は彼女を指差しながら紹介した。

妹・・・・あぁだから姫か。
こいつが溺愛してやまない例の妹ちゃんね。

「そんでこっちが頼。俺の悪友。・・・一応お前の店のオーナー。」
おいおい・・・悪友って・・・彼女冗談通じるのかな・・・。

そっと彼女を見た。
彼女は、綺麗でしっかりした印象だった。
大樹とは結びつかない、美しさがあった。
だが、いつも大樹から聞かされる妹ちゃんの印象とはかけ離れている気がした。


「お前、悪友ってひどくね~。
みゆちゃんに変な誤解されるぞ。」
茶目っ気たっぷりで言ってみた。

隣の大樹は、普段見せることのないデレデレとした顔をしていた。
年の離れた妹ってそんなに可愛いものか??
と思いながら姫を見ていた。
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