優しい温もり【完結】
ひとしきり笑った彼は私の横へ来て

「ごめんね。
初めまして、橘 頼朝です。
よろしくね。 美優ちゃん。」
目の前に差し出された名刺。
私は彼の笑顔が眩しすぎて直視できずにいた。

「店のオーナーって言っても、名ばかりだから安心して。
そう固まってないで。
・・・・・・まぁ、なんかあったら名刺の携帯に連絡して。
助けてあげるから。」
優しい笑顔の彼。

この笑顔反則だよ。
めちゃくちゃ素敵。
そう思いながら彼を盗み見ていた。


「さて・・・・頼も来たことだし。 お前帰れ。」
なっ・・・・・なんですと~。
何をいきなり言い出すのよ・・・・大ちゃんは・・・・。
これから彼とお話出来ると思ったのに。
不満な目で大ちゃんを見つめ続けた。

「ダメ。子供は寝る時間。」
私のおねだり光線が通じないよ・・・・今まで通じたことないけど。
そんなやり取りをしている横で頼くんがまた笑っていた。

「あははは・・・・美優ちゃんごめんね。
今日はもう遅いから帰って。 これから大樹と大人の話するからさ。
また今度 ゆっくり話そうね。」
優しい笑顔で頼くんにまで言われたら仕方がない。
おとなしく帰ろう・・・。

「じゃ~帰る。」
むくっと立ち上がり、子供丸出しで拗ねながら2人と別れて店を出た。



今 私は ”橘 頼朝”と書かれた名刺を見つめていた。

橘 頼朝・・・・たちばな よりとも・・・・ヨリくん・・・・
私はなぜか 彼の優しい笑顔を思い浮かべていた。
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