俺がしあわせにします
けど、彼女の体は動かない。
心も拒否している。
俺が真剣になればなるほど、悪い方へ考えがいって。

このままいけば、俺は振られる。
そして彼女は、俺を振った罪悪感を感じて、ますます本気の恋愛を避けることになるだろう。

あくまで可能性に過ぎない。
修二に言わせれば、妄想の域だ。
でも、振り払えない。

押してダメなら引いてみろって言うけど、引いたらきっとダメだ。
俺が引いたらこの恋は終わる。

一番簡単な幕引きだ。
今以上に誰も傷つかないし、何も変わらないことに和奏さんは安堵するかもしれない。
何も解決しない。
それが唯一の解決法かもしれない。

だめだ。
ネガテイブな和奏さんの思考に寄り添おうとしても、引っ張られてるだけだ。

「はぁ〜・・・」

口からため息が漏れた。

「重っ!床が傷ついたんじゃないか?」

「!」

誰もいなかったはずの背後から声がして、俺はここが会社だということを失念していたことに気づいた。

振り返るとそこに立っていたのは、

「椎名さん!」

「よう」

俺の背後に立っていた椎名さんは、片手を上げた。
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