俺がしあわせにします
「誕生日だろ、今日。二十代最後の」

椎名さんは最後は面白がってる。

「あ、うん。そうだけど」

え?今日は和奏さんの誕生日?

俺は全然知らなかったことに少し落ち込んだ。

「忙しいし、わざわざ気遣わなくていいのに」

と言いつつ、嬉しそうに包みを両手で抱きしめている。

「予定ないなら、今夜うち来いよ。おまえも一緒に」

椎名さんは俺に顔を向けた。

「え?俺ですか?俺奥さんと面識ないし、ご迷惑じゃ」

びっくりして断ろうとしていると椎名さんが言った。

「イケメンに会えるって、きっと大喜びで歓迎してくれるぞ」

椎名さんに言われると素直に喜べないんだってば!

「ごめん、わたし予定あるんだ」

申し訳なさそうに、小声で和奏さんが呟いた。

それはもしかして?!ヤツと一緒に祝うから?

思わず和奏さんを見つめた。

「なんだよ、おまえそんなヤツいたの?だったら早く言えよな」

椎名さんそこまで斬り込まなくていいよ!

俺はなぜかドキドキしながら椎名さんに合図を送った。

「う、うん、まあ。そんないいもんじゃないけど」

否定しない。
結婚は否定したけど、恋人としては否定しないってことか。

「そっか。じゃあ、また今度な」

椎名さんは深追いせず、さらっとまとめた。
俺へのフォローも忘れずに。

「倉科、午後そんなキツイ仕事あんのか?カオに出てるぞ」

「え?何かあったっけ?ごめんわたし把握してない」

「いえ、大丈夫です!飯も食ったし、パワー満タンですから」

俺は心配そうな和奏さんを安心させるため、大げさに笑顔を作った。
< 24 / 195 >

この作品をシェア

pagetop