婚約者は野獣



「こんな日はパーっと行こう」



そんな繭香に乗せられるように
中村組の繭香の部屋で着替えを済ませるとお喋りに花が咲く


「東白へは変装のまま通うつもりなの?」


「とりあえずはね」


「ま、不良高らしいから素のまま行かない方が良いわね」


「控えめが一番っしょ」


「不良どもが千色の色気に倒れるわ」


「・・・は?意味分かんない」


「分かんなくていーのいーの」


繭香の言葉に頭を傾げたけれど
勿論意味なんて分からなくて繭香を見ると
少し意地悪そうな顔で笑うと


「で?話を戻すけど
千紗さんって絶対凱さん狙いだよね」


話を飛躍させた


「間違いなくね」


「でも千紗さんにも許婚が居るんだからそれが恋愛とか結婚とかに繋がらないでしょ?」


「にしてもよ、やっぱりムカつく」


「こんな日はパーっと飲もう」


万歳をしながらハイテンションな繭香に向けて


「繭香、分かってるよな」


部屋の入り口に立ったまま
恐ろしい殺気を放っている穣さん


「分かってるって〜」


殺気に気付いているのかいないのか
呑気な返事をした繭香と

夜の帳が降りた頃に
繁華街へと繰り出した


行きつけのバーの近くで車を降りると
目的のビルまで出来るだけ明るい道を選んで歩いた


「穣さん機嫌悪ーーぃ」


「穣は過保護過ぎるのよ」


「嬉しい癖に〜」


「否定しないわよ、嬉しいんだもん」


「チッ」


苛々して舌打ちまでしてしまったのは
付き人の穣さんと付き合っている繭香への嫉妬心から

私もそうなって欲しいけれど
どう足掻いても覆らない


「パーっと飲むよ〜」


エレベーターに乗り込むと最上階のボタンを押した





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