婚約者は野獣


「・・・何が可笑しい」


「だって」


「ん?」


「ヤキモチ妬いてくれたんだよね?」


クスッと笑うと
あんなに凍りついていた雰囲気が
バラバラに崩れて

耳まで赤くした永遠が現れた


クーーーーーーーーーっ
可愛いんですけどっっ


「昨日帰って直ぐチャイムが鳴ってね
驚いてる間に笙子さんがやって来て」


「で?」


「森谷との顔合わせの話を聞いたの
それから夜ご飯一緒に食べて・・・」


「は?」


「笙子さんが一人で来たって聞いたから
大吾が焦って後藤さんに連絡したら
組長と後藤さんが来て・・・」


「なんだよあいつら」


説明していくうちに最後は悔しそうな顔をした


「聞かなかったの?」


三人が家に帰ってから
一ノ組の組長からの話も合わせて聞かなかったのだろうか


「聞いてねぇ・・・
千色に連絡がつかなくて・・・
ずっと部屋に居た」


携帯を握りしめた永遠が見えるようで胸が苦しくなった


「ごめんね?」


携帯に意識がいかないのは
いつもの私の癖みたいなもの

でもその所為で永遠がずっとこんな顔をしていたとすれば

悪かったなって思った


「・・・いや、千色は悪くねぇ
いや・・・悪い・・・か」


苦笑いと共に
「携帯は常に充電を気にしてろ」


電気屋さんのような発言をした後で


「昨日、寂しかった」


ストレートに想いを打つけてきた


「・・・っ」






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