婚約者は野獣




堂本組長と若頭は
顔は勿論のこと纏う空気が似ている

それに加えて姐さんも高校生の娘がいるとは思えないほど若くて美人


組長の右側に座る若頭と左側に座る姐さん


堂本側は三名しか座っていないのに
やはり平伏したくなるような気分になる


「先生には、二人が世話になっている」


囚われたまま視線の先で
堂本組長は私に向かって頭を下げた


「・・・っ」


そのことに驚き過ぎて
返事もできないでいる私へ


「亜樹と琴をよろしくお願いします」


姐さんも頭を下げた


その瞬間、遂に瞬きも呼吸も忘れた


それなのに


「俺からも、琴を頼む」


若頭までもが頭を下げて


ピンと伸ばしていたはずの背筋から
今度は固い支えが溶けた気がした


「千色」


ふらりと揺れた身体を
隣から伸ばされた手が支える


その僅かな衝撃に
トリップしそうな状態から抜け出せた


「こ、こちらこそ・・・
よろしくお願いいたします」


出来る限り頭を低く下げれば


クスクスと笑い声が聞こえた


恐る恐る頭を上げると笑顔でこちらを見る姐さんと目が合った


「そんなに緊張しないで大丈夫よ」


優しくそう声を掛けて
「ねぇ皇さん?」と隣に座る堂本組長を見上げた


「あぁ、そうだな、これから
長い付き合いになるから普段通りで良い」


そう言って、また少し表情を緩めてくれた
返事の代わりに一つ頷くと肩に入っていた力が抜けた













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