婚約者は野獣


木村の家はお義父さんに笙子さん
未来さんと遥華さん

大勢の組員さん達も凄く良い人達ばかりで帰りたくなくなる程
居心地が良すぎる

それなのになんでかって?


それは・・・



永遠が居ない


いや・・・


正確には“永遠が忙しい”


来月に迫る若頭襲名披露に向けて
永遠は忙しい毎日を送っている

やっと出来た隙間だって
『留守のままじゃ申し訳ねぇ』って
Nightの倉庫へ行ってしまう


だから・・・


永遠の匂いがする部屋は
一人で居るには広すぎて・・・辛い

木村の家族との楽しい時間が多いほど
永遠が居ないことが寂しくて

メッセージアプリのIDを交換した琴ちゃんから

[今夜は堂本でお泊まりです]

って知らせが届いたって

私は大吾とマンションへ帰ることにしている

もちろん

永遠はこまめに電話もメッセージも送ってくれる

『来月まで我慢してくれ』って
切ない声で言われると

永遠も同じ想いをしているって
安心もできるけれど


いつも手を繋いで、頭を撫でて
抱きしめてくれた永遠が側に居ないだけで


欲張りになった私は
寂しさから逃げてしまったの



本当は久しぶりに永遠の近くに居られる修学旅行を楽しみにしているのに


気持ちとは裏腹に
素っ気ない返事しか出来なかった






* * *




窓から流れる景色をボンヤリ見ている間に


どうやら空港に到着しているようで


「正面で降ろすから、後は若と楽しんで」


ルームミラー越しにチラチラと視線が合う大吾は

最近の私を心配してくれている

その大吾だって
私が木村の家に居る間は永遠に付いて出かけているから

気持ち的には燻ったままなのだ









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