婚約者は野獣


「トワ君っ」


「あ゛?」


え?笑ってたはずなのに
なんだか一瞬で不機嫌な返事じゃない?

コンタクトを入れてない所為で
トワ君の表情の変化が見えない


シルエットをジッと見つめると


「千色、俺を年下扱いするな」


「え」


でも六つも下なのに・・・

そう思った私の頭の中を見透かすように


「歳の差は関係ねぇ」


そう言い切った


ま、年下と分かったからって
呼び方を変えた私も悪い・・・か


「永遠《えいえん》って書いてトワ
覚えろ、さんも君も付けんじゃねぇ」


不思議と嫌じゃない俺様発言も
永遠の姿に合っているから困る


「分かった」


「呼んでみ」


「・・・永遠」


「名前以外付けたらキスな」


「・・・は?」


「罰はそれなりじゃねぇとな?」


クツクツと笑う永遠は
なんとも理不尽で横暴


それでも、これから先なんとしても関わらない努力をしようと心に決めて微笑んだのに


「それに・・・
前にキスしただろ?」


永遠の口から聞こえたのは驚愕の事実だった


「・・・え?」


「前にMoonで会った」


えっと・・・っ!!!


記憶が蘇った


「あの・・・扉が開いた個室?」


「あぁ」


「ええええぇぇぇぇぇ」


ムンクの叫び状態で声を張り上げた


「てか、気付いて無かったのか?」


「あの日コンタクト入れてなくて」


「それで何となく視線が合わねぇ気がしたのか」


「・・・うん」


「あれから凄ぇ探した」


「嘘」


「嘘なんか言わねぇだろ」


「謝って」


「あ゛?」


「だから謝って」


「なんで謝んなきゃなんねぇ?」


「初めてだったのキス・・・だから」


「へぇ、じゃあ都合良いな」


「え?」


「俺が初めてで最後だ」


「は?」




頭の中がショートした






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